「○万円の壁」はひとつじゃない

漠然とした不安を、少しずつ言葉にするために

よくある声・不安・誤解

「○万円を超えると損をすると聞きました」
「できれば、その壁は越えないほうがいいですよね」
「正直、何がどう変わるのかよく分からなくて不安です」

いわゆる「○万円の壁」という言葉は、
働き方を考える場面でよく登場します。
一方で、その中身については、
「なんとなく怖いもの」
「越えたら大変なことが起きそうなもの」
として捉えられていることも少なくありません。

このテーマは、
数字だけが独り歩きしやすく、
不安が漠然と膨らみやすい分野でもあります。

「壁」は一つではなく、いくつも存在する

一般的に「○万円の壁」と呼ばれているものは、
実は一つの制度を指しているわけではありません。

税金に関わるもの
社会保険に関わるもの
配偶者手当など、会社独自の制度に関わるもの

これらが重なって、
ひとまとめに「壁」と表現されているケースが多く見られます。

そのため、
「○万円を超えたらすべてが一気に不利になる」
という理解は、必ずしも正確ではありません。

どの壁が関係するかは、
働き方、家族構成、加入している制度などによって異なります。
ケースによって影響の出方が違う、という前提がとても重要です。

不安の正体は「損か得か」だけではない

キャリア相談の場でお話を聞いていると、
「お金の不安」として語られているものの中に、
実は別の気持ちが隠れていることがあります。

たとえば、

制度を理解しきれていないことへの不安
あとから「知らなかった」と後悔したくない気持ち
家族や職場とのバランスが崩れることへの心配

これらが重なり合い、
「○万円の壁は越えないほうがいい」
という一つの結論に集約されていることも少なくありません。
不安は、必ずしも数字そのものから生まれているとは限らないのです。

キャリアコンサルタントの視点から

見えない不安を、分けて考える

キャリアコンサルタントとして大切にしているのは、
「越える・越えない」を決めることよりも、
何に不安を感じているのかを言葉にすることです。

手取りが減るかもしれない不安
働く時間が増えることへの負担感
家庭内の役割が変わることへの戸惑い

これらは、すべて別のテーマです。
一つずつ分けて考えることで、
「今すぐ決めなくていいこと」
「自分ではコントロールできないこと」
「相談すれば整理できること」
が見えてくる場合があります。

「壁」という言葉が、
すべてを一気に決めなければならないような
圧を生んでしまっていることもあります。

「越えない」という選択も、「越える」という選択もある

どの働き方を選ぶかは、
正解・不正解で決められるものではありません。

今は時間を優先したい時期かもしれませんし、
収入や経験を広げたいタイミングかもしれません。
数年後には、考え方が変わることもあります。

大切なのは、
「○万円の壁をどうするか」ではなく、
その時点の自分にとって、何を大切にしたいかです。

制度は、その判断を縛るためのものではなく、
考える材料の一つに過ぎません。

知っておくと助かる視点・確認先

税や社会保険に関わる制度は、
変更されることもあります。
判断の際には、公式情報の確認が安心です。

  • 国税庁
  • 日本年金機構
  • 健康保険組合
  • 厚生労働省

また、会社独自の手当や制度については、
人事担当や相談窓口に確認することで、
自分のケースに近い情報が得られることもあります。

最後に

ここで、一つ問いを置いてみます。

「今、不安に感じているのは“金額”でしょうか。それとも別の何かでしょうか。」

すぐに答えが出なくても構いません。
完璧に理解してから決める必要もありません。

「○万円の壁」は、
越える・越えないを迫るためのものではなく、
働き方や暮らし方を見直すきっかけの一つです。

必要になったときに、
「あのとき、分けて考えていいと知っていた」
そう思い出してもらえたら幸いです。

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